紀伊国坂、九郎九坂、弾正坂、牛鳴坂、薬研坂、丹後坂、稲荷坂、新坂、円通寺坂、乃木坂、三分坂、檜坂、本氷川坂、氷川坂、転坂、 　南部坂

	港区の北部は、千代田区、新宿区、目黒区に挟まれていて、麹町台地と麻布台地に挟まれた赤坂見附付近から溜池にかけては、落ち込んだ低地が続いています。また、低地は、赤坂五丁目あたりに入り込んでいて、昔、松平美濃守の広大な屋敷がありましたが、現在この辺の低地はＴＢＳテレビの複合施設が建っています。この低地を挟んでいくつかの坂が存在します。麻布台地あたりの地形は非常に起伏が激しく、その分坂道も多く存在しています。ここでは、港区の北部、麹町台地の境から首都高速３号線に挟まれた辺りにある坂道を探していきます。坂道に同期して『江戸切絵図集成』にある道筋を、現代の道に近づけて坂道とのロール・オーバーもしてみました。『江戸切絵図集成』にある道筋を、現在の地図上に落としてみますと、現在の道の上では表現できない道や、なくなってしまっている道が多くあります。それでもできるだけ現在の道筋に置き換えてトレースしてみた地形図が、３番目のロール・オーバー図です。道があるところまでで寸断されていますが、『江戸切絵図集成』にある範囲内を表現してみますと、上のような表現図になってしまいます。『江戸切絵図集成』にある絵地図は、その地域のみで、他との境目や、つながりはほとんど考慮していないのではないかと思います。それでも、今に残る江戸時代の道筋を、坂道とともに追いかけてみてはいかがでしょうか。なにか新しい発見ができるかもしれません。　赤坂辺りの『江戸切絵図集成』は、そのほとんどが広大な敷地をもった大名屋敷で、その真ん中辺には、”赤坂元馬場”と描かれた細長い場所があり、道を挟んで武家屋敷がたくさん並んでいます。『江戸切絵図集成』の中に、円通寺坂をひとつ隔てた、稲荷坂に続く道には、”黒鍬谷”とあります。道は、薬研坂から登ってきた道を頂上として、稲荷坂で両側に落ち込んでいます。なるほど、”谷”の表現がよく表れている場所ですが、”黒鍬谷”とは、江戸時代に、”黒鍬者”と呼ばれていた戦国時代には築城、道普請を、江戸時代になって、江戸城の作事、防火、掃除、また、川普請や新田開発をしていた苗字帯刀が許されていない下級武士集団がいたそうですが、その人たちの住居があったのでしょうか。円通寺坂の道との間には、”御黒鍬組”と書かれた大きな敷地があります。ここに黒鍬者たちが住居を構えていたのでしょうか。また、檜坂を下る辺りには、”岩水谷”と書かれた道があります。”黒鍬谷”とはひとつ台地を隔てた低地へ下る道であったと思います。”黒鍬谷”の低地には、黒鍬者の住居があり、広大な松平安藝守の屋敷を挟んだもう一方の低地には、小さな武家屋敷がたくさん書かれています。また、このころの絵地図には、道はありますが、「弾正坂」とは書かれていませんし坂の印”||||”もありません。”牛鳴坂”とのＴ字路で止まっています。道はありますが、”九郎九坂”と言う名前も書かれていません。この道には、坂の印の”||||”もありません。薬研坂を上り、稲荷坂で左折して、稲荷坂を下りきったところに”シンサカ”と読めますが、字が不鮮明で判読できませんが坂道が書かれています。これが位置的にも”新坂”であると思われます。この近辺の道筋も、広大な敷地も持つ大名屋敷が数多くあり、低地には旗本や小役人、御手先組、黒鍬組といった人たちの小さな屋敷が固まっていて、３番目の地形図のロール・オーバーした時に見れる黄色い道筋しかなかったようです。江戸時代の山の手には、いかに広大な敷地を持つ大名屋敷がたくさんあったこともよくお判りと思います。
	紀伊国坂（別名：紀の国坂、紀国坂、赤坂、茜坂）
	紀伊国坂上		紀伊国坂下		紀伊国坂と弁慶濠（左）
	この坂は、坂下から見ると、右は弁慶濠が続き、左は、紀伊家（現迎賓館の敷地）の広大な敷地に挟まれた長く右にゆっくりと曲がった、傾斜もある長い坂です。かなりの長さと傾斜により歩くのに難儀してしまいます。そのほかには何もなく、その昔は、日が落ちてしまうと真っ暗な、非常に淋しい道であったことがうかがわれます。またここには”むじな”がでたそうで、ラフカディオ・ハーンの「怪談」にも出ている、のっぺらぼうが出没する坂道だそうです。（それほど淋しい道であったのでしょう。）現在は、ご覧の通り、首都高速４号線が道の上を通っていて、坂自身も大変多くの車が、ひっきりなしに上り下りしていて、非常に交通の激しい道となってしまっています。港区には、”赤坂”と言う地名はありますが、”赤坂”と言う坂はないものか探してみますと、なんと、この紀伊国坂の別名が”赤坂”（「今昔　東京の坂」による）と付いていました。この坂が、赤坂の名前の発祥の坂なのでしょうか。今では、味気のない坂になってしまっています。「江戸切絵図集成」尾張屋版にも、赤坂御門から下りてきて右に曲がったところから、紀伊殿のお屋敷を左に見ての、”紀伊国坂”の名前があります。それにしても紀伊殿（紀伊殿となっていましたが、紀伊の主流なのでしょうか。）のお屋敷の広大さには、江戸時代の大名はすごかった、の一語です。（港区北部の範囲に、紀伊国坂が大きく外れているため、上の地形図には入っていません。位置としては、九郎九坂の右上、迎賓館と弁慶濠に挟まれた長い坂道）
	九郎九坂（別名：鉄砲坂）
	九郎九坂上		九郎九坂下		坂上の豊川稲荷横に位置する細い急傾斜な坂道で、坂上の木標には、『江戸時代の一ツ木町名主　秋元八郎左衛門の先祖、九郎九が住んでいて坂名になった。鉄砲練習場があって鉄砲坂ともいう。』とあります。「江戸切絵図集成」尾張屋版の描かれたころには、坂名もなく、坂道の印（||||）もない。牛鳴坂から、紀伊国坂にかけての道には、”元赤坂丁”とあるのみです。ですので、豊川稲荷も描かれていません。坂は、細い道にあり、今では青山通りと紀伊国坂に至る抜け道のような存在になっています。行った頃は、豊川稲荷の反対側が工事のためか、より以上に人通りも少なく、淋しい坂でした。
	弾正坂
	弾正坂上		弾正坂下		弾正坂は、坂下にある木標には、『西側に吉井藩松平氏の屋敷があり、代々弾正大弼（だいひつ）に任ぜられることが多かったため名づけられた。』とあります。標柱は新しく、他の古い標柱とは説明の書き方が違っていて、しごく簡単に書かれていました。坂は、大きな建物に挟まれたなだらかな坂で、青山通りを挟んだ反対側の坂の方が急坂ですが坂名はなかったようです。港区が発行している「港区観光マップ」では、坂下で牛鳴坂に合流していて、坂上は青山通りと交差してから再び下り、坂下で九郎九坂と交わっていますが、『江戸切絵図集成』尾張屋版には牛鳴坂のＴ字路から、青山通りまでとなっています。その時代にも道は描かれていますが、坂の名前も印”||||”はありません。
	牛鳴坂（別名：牛啼坂、梍角坂：（さいかちさか））
	牛鳴坂上と木標		牛鳴坂下		坂の木標には、『赤坂から青山に抜ける厚木通で、路面が悪く車をひく牛が苦しんだため名づけられた。さいかち坂ともいう。』。また、「新撰東京名所図会」には、今は、道路もむかしより閎く（ひろく）且つ直線になりければ、大いにその趣を異にせり。とあり、昔はもっと狭く、傾斜も急であったと思います。坂道は、青山通りから少し斜めに上って行き、大きく右にカーブしていて坂途中には丹後坂に入る道があり、さらに少し行くと右に弾正坂に接する。青山通りに再び出て、薬研坂上に交わる。『江戸切絵図集成』には、青山通りとみられる道は、赤坂御門から真っすぐには行けず、濠を渡りすぐ左折し、また右折して赤坂表伝馬丁二丁目と言う通りを牛鳴坂に入って行く道となっている（３番目の地形図参照）。
	薬研坂（何右衛門坂（なにえもんさか））
	薬研坂上（青山通りからの下り坂）		薬研坂の途中の一番低地部		薬研坂と地位にある標柱
	坂の標表には、『中央が窪み両側の高い形が薬を砕く薬研に似ているために名づけられた。付近住民の名で、何右衛門坂とも呼んだ。』とあります。坂は説明の通り、薬研の形となっていて、青山通りから大きくゆっくりと左に曲が理ながら、かなりの傾斜を以って下っています。一番下まで下って再び上って行く長い長い坂です。『江戸切絵図集成』にも、青山通りからの坂と、左にカーブしている辺りの２ヶ所に"||||"マークがあり、当時も今も同じような坂道であったと思われます。私的には面白みのある坂のひとつでもあります。また、坂は、牛鳴坂、弾正坂、薬研坂と青山通りで接しています。江戸時代には、赤坂御門を下って、赤坂表伝馬丁の通りを、牛鳴坂で上りに入り、この通りを頂点として、そのまままっすぐに行く道と、途中、薬研坂に下るような道筋となっています。
	丹後坂
	丹後坂上		丹後坂下		この坂の木標には、『元禄（一六八八～）初年に開かれたと推定される坂。その当時、東北側に米倉丹後守（西尾丹後守ともいう）の邸があった。』とあります。坂は黒鍬谷から上って行くと、牛鳴坂のある道へ出る急傾斜の２段の階段坂です。かなりの急傾斜なので、その昔は石雁木を組んで階段にしていたそうです（今昔　東京の坂）。丹後坂とありますので、坂ができたころは、何々丹後守の屋敷があったのではと思いますが、『江戸切絵図集成』には、丹後守の名前はありません。坂は写真でご覧の通り、今でも狭く両側のお屋敷に囲まれた、薄暗い坂の様子です。切絵図には、円通寺坂の道と黒鍬谷の道の間に、３番目の地形図にあるように、道が２本ありますが、１本は、昔も今も鍵方に曲がっていますので、真っすぐの方がこの丹後坂ではないでしょうか。
	稲荷坂（別名：掃除坂）
	稲荷坂上		稲荷坂中
	この坂の木標には、『坂下北側に円通院がありその境内に稲荷への門があったための坂名、坂上に江戸城中清掃役の町があり清掃坂ともいう。』とあります。坂は曲がりながらのかなりの傾斜のある坂でした。『江戸切絵図集成』を見ますと、坂上に円通寺があり、その敷地内に”稲荷”と書かれており、それが坂名になったのではないかと考えます。また、別名：掃除坂と呼ばれていたのは、この道の左右には、”御掃除之者町屋敷（江戸城中の掃除役人たちの住んでいた場所）”があり、そこから付いた名前でもあります。絵図には、近辺には、もう一か所”円通寺”があり、そっちの前の通りが”円通寺坂”となっています。切絵図を見ますと、稲荷坂のある円通寺の方が大きく書かれていますが、小さい方の円通寺前の坂が円通寺坂とは、なんとも坂の命名とはおもしろくみょうな気もします。「今昔　東京の坂」には、薬研坂と交わった反対側にも稲荷坂がありますが、”港区観光マップ”には、こちら側しかありません。また、『江戸切り絵図集成』にも、こちら側の坂が稲荷坂となっていて、反対側の道は、坂道だったのでしょうが”黒鍬谷”と書かれています。
	新坂（シンザカ）
	新坂上		新坂下		この坂の木標には、『シンザカ、できた当時は新しい坂の意味だったが、開かれたのは古く元禄十二年(一六九九)であるしんさかとも発音する。』とあります。『江戸切絵図集成』のシンサカは、稲荷坂上から青山通りへ行く道の途中にあり、左右には、青山備前守の中屋敷と毛利淡路守の上屋敷の広大な大名屋敷があり、大きく曲がっています。しかし、今の新坂は、狭い真っすぐな長い坂道となっていました。
	円通寺坂（別名：円通坂）
	円通寺坂上		円通寺坂と円通寺（右）		円通寺坂下
	この坂の木標には、『えんつうじざか　元禄八年（一六九五）に付近から坂上南に移転した寺院の名称をとった。それ以前に同名の別寺があったともいう。』とあります。『江戸切絵図集成』にも、稲荷坂の方に、大きな円通寺があり、こっちには小さく円通寺が書かれています。大きな円通寺が取り壊され、こっちのみになってしまったようです。当時のこの道筋には１０以上の寺院がこの道に沿ってありました。今は、円通寺のみが残っているようです。坂は、円通寺前まではなだらかな坂ですが、通り過ぎたあたりから急な傾斜となって一ツ木通り（一ツ木丁）へ下っている長い坂道です。
	ここでこれらの坂の関係について少し書いてみます。（３枚の地形図を見ながら読んでいただければと思います。） これらの坂の関係は、『江戸切絵図集成』を見ていきますと、江戸城方向から赤坂見附を下り、また登り坂になってすぐ斜め左手に続き牛鳴坂に出ます（いまは直線の大きな通りになっていますが。）。牛鳴坂の途中に左折する道があり、そちらに歩いていくと丹後坂に出くわし、丹後坂を降りきると黒鍬谷に出ます。黒鍬谷がこの辺の谷地の底辺に当たり、丹後坂を降りきってから、黒鍬谷を右に行きますと、稲荷坂の坂下に出、黒鍬谷のひとつ隔てた道を右折して進みますと円通寺坂の坂下に出ます。牛鳴坂の坂下付近から左手に行く道がありますが（九郎九坂の道と思われます。）、坂名も坂の印”|||”もありません。道は、”元赤坂丁”と書かれています。また、牛鳴坂を丹後坂を通り過ぎて、なおも少し進むと、弾正坂が右手にありますが、この道も、道は描かれていますが、坂名も坂の印”|||”もありません。弾正坂を通り越して少し行きますと、薬研坂の坂上が左手にあります、この道には”ﾔｹﾞﾝｻｶ”と書かれていて、坂の印”|||”も描かれています。この薬研坂を下り、再び上った尾根上に稲荷坂との十字路に出て、なおも進んでいきますと、円通寺坂に入る道に出ます。円通寺坂を左手に見て、まっすぐ進みますと、三分坂の坂上に出ます。 　このように、この辺の道は江戸時代からある道がほとんどそのまま残れされていることがよく判りますし、また、この辺が黒鍬谷を底辺とした大きな谷地があったことも、重ね地形図の３番目の坂と江戸時代の道（江戸切絵図集成にある道を、現代の道に近づけて著者が書いたもの）を重ね合わせた図を見ますとよくお判りと思います。この辺が谷地であることは、地形図の１番目と２番目の重ね図を見ていただくと判ると思います。この辺は、赤坂見附下を底辺とした谷地が複雑に入り組んだ凸凹の地形であることもお判りになると思います。 　このように、坂道を点でなく面で描きながら歩いていくのもとても面白いものですし、地形もよく判り、胸をわくわくしながら歩いていました。この辺の谷地地形についても”地形歩き”の項で詳しく書いていきたいと思います。
	乃木坂（行合坂、なだれ坂、膝折坂、幽霊坂）
	乃木坂上		乃木坂中
	この坂の標柱は見つかりませんでした。この坂は、坂上で竜土町（今の外苑東通り）に交わります。「今昔　東京の坂」には、竜土町に出会うことから”行合坂”とも呼ばれ、”なだれ坂””膝折坂”は、傾斜の急なこと、また傾斜が急でガクンと膝が折れるという意味。と書かれています。しかし今は、外苑東通りからＳ字にカーブして下って行く、傾斜もそれほどでもない坂になっています。従来の坂名に対して、乃木坂となっているのは、坂上に乃木将軍邸があったから、そこからとられたものと思いますが、昔からの坂名の方が情緒があっていいのではと思います。坂はご覧の通り整備されていて、まったく趣のない坂になってしまっています。『江戸切絵図集成』では、坂道の印"||||”はなく、竜土町と交わる付近に番所と辻門の印があり、道に沿って赤坂今井町とあります。「近江屋」版には、”ユキアイサカ”とあり、坂下は、今井谷丁と書かれていて、そこに坂があったことが判ります。坂中には、谷播磨守の上屋敷と鉄炮稽古場と書かれた射撃練習場があります。道は、両側とも広大な大名屋敷に挟まれていて、当時は人の通らない道で”幽霊坂”の名も妙を得たりと思います。
	三分坂
	三分坂上		三分坂中にあるお寺の築地塀
	この坂の木標には、『さんぷんざか　急坂のため通る車賃を銀三分（さんぶん：百円余）増したためという。坂下の渡し賃一分に対していったとの説もある。さんぶでは四分の三両になるので誤り。』と書かれています。坂は急な傾斜があり、途中で９０°右折している。坂の途中には、”港区の文化財　報土寺築地塀（塗塀）”があります。坂は薬研坂より続く道にあり、報土寺横で直角に右折していて、坂中からさらに左に直角に折れています。坂下には、赤坂元馬場がありました。『江戸切絵図集成』には、坂も、坂名もなく、道は、”三軒屋”（と読めますが？）と書かれている道が左に大きく曲がっています。また、道横には”赤坂一ツ木丁”とも書かれています。三分とは、「今昔　東京の坂」には、重量の単位の分（ぶん）と通貨の単位の分（ぶ）の解説が書かれている。いずれにしても坂が急なので割増料金を取られてので付けられた坂名のようです。坂道には、コンクリート道に滑りとめの輪の凹みが施してあり、今でも急で、雨が降ると滑りやすくなるのではないかと思われるくらいの急坂で、当時この坂を雨の日に行き交うには大変な難儀であっと推察できる急坂です。この報土寺前を直進する道も、昔からあったように書かれていますが、坂はなぜか左折している方に下っています。急傾斜といい、鍵形に曲がっている道といい、趣のある坂で、好きな坂のひとつです。
	檜坂（別名：清水坂）
	檜坂上		檜坂下		檜坂下と勝海舟邸跡の碑
	この坂の木標には、『江戸時代には、檜木が多いため檜屋敷と呼ばれた山口藩毛利邸（旧防衛庁、現檜公園）に添う栄えあった』と書かれています。坂は檜公園の横にあり、傾斜もある坂道です。「今昔　東京の坂」には、江戸時代長州藩松平大膳太夫の中屋敷で、その庭園は、清水亭と呼ばれ、邸地には檜がの木立が多く、土地の人々が檜屋敷と呼んだ、かつての檜町の町名もここに由来している。と書かれています。坂を降りきったところには、幕府側で活躍した勝海舟邸跡の碑がありましたが、そこはコンクリートの邸宅となっていてなんの趣もない場所となっていました。
	本氷川坂（（別名：転坂）
	本氷川坂上		本氷川坂中		本氷川坂下
	この坂の木標には、『坂途中の東側には本氷川明神があって坂の名になった。社は明治十六年四月、氷川神社に合祀された。元氷川坂とも書いた。』と書かれています。坂上は狭く、高い塀と木立に遮られて陽もあまりささず、 薄暗い陰気で、坂の途中からかなり険しい傾斜となり右に大きく曲がっていて、坂下に出る道です。氷川神社を挟んだ反対側にある、氷川坂とは趣をまったく逆にした、昔の道といった風情に情緒を感じます。
	氷川坂（別名：転坂）
	氷川坂上		氷川坂下		この坂の木標には、『八代将軍徳川吉宗の命で建てられた氷川神社の元正面に当たる坂である。』と書かれています。しかし坂は、写真をご覧の通り坂も緩やかで、生活道路となっていて、道の両側には生活ごみが出されていて、まったくの面影のない坂となっています。
	転坂
	転坂上		転坂下		この坂にある木標には、『江戸時代から道が悪く、通行する人たちがよくころんだために呼んだ。一時盛徳寺横の元氷川坂もころび坂といった。』と書かれています。しかし今の坂は、写真をご覧の通りきれいに整備されていて昔の面影はまったくありません。が、坂はかなりの急傾斜で、コンクリートの斜面には、滑り止めのディンプル（ドーナッツのような形で、少し凹んでいる。）があります。『江戸切絵図集成』には、氷川坂から一本隔てた道が、南部坂に通じていますが、その道には、坂名も坂の印”||||”も書かれていません。
	南部坂（別名：難歩坂、なんぽ坂）
	南部坂上		南部坂下		南部坂下にある坂の碑
	この坂道にある木標には、『江戸時代初期に南部家中屋敷があったためといい、「忠臣蔵」で有名である。のち険しいため難歩坂とも書いた。』と書かれています。道幅も狭く大きくゆっくりと、かなりの傾斜をもって左にカーブしています。『江戸切絵図集成』には、坂下に向かって、左が松平美濃守の屋敷で、右側には真田信濃守の屋敷があり、この時代には屋敷替えされていたのでしょか、南部家の屋鋪は書かれていません。
	この項おわり