ここからは文京区の東中央部にあたる地域にある坂道を追いかけていきます。文京区の東中央部は台地上となっていて坂道の数もあまりなく台地の東側、台東区との境辺りは江戸の範囲に比べてもう辺境地なのか切絵図にも載っていない部分です。しかしながらいつものように「今昔　東京の坂」、「文京区おさんぽマップ」と「文京区の坂」（文京区区役所にて販売されています。）をたよりに歩いてみたいと思います。しかしながら それらの資料には解剖坂、だんだん坂、しろへび坂、アトリエ坂は載っていません。行って確かめるしかありませんね！
	暗闇坂、弥生坂、異人坂、お化け階段、新坂、根津裏門坂、解剖坂、汐見坂、だんだん坂、しろへび坂、団子坂、アトリエ坂、新坂、胸突坂、曙坂、中坂、浄心寺坂、薬師坂、伊賀坂、蓮華寺坂、御殿坂、逸見坂、暗闇坂、一行院坂
	暗闇坂
	暗闇坂上		暗闇坂中		暗闇坂下
	この坂の標には『江戸時代は、加賀屋敷北側と片側寺町の間の坂で、樹木の生い茂った薄暗い寂しい坂であったであろう。江戸の庶民は、単純明快にこのような坂を暗闇坂と名付けた。２３区内で同名の坂は１２か所ほどある。区内では、白山５丁目の京華女子高校の裏側にもある。この坂の東側鹿野氏邸（弥生２−４−１）の塀に、挿絵画家、高畠華宵（かしょう）の記念碑がはめこまれている。華宵は、晩年鹿野氏の好意でこの邸内で療養中、昭和４１年７月に亡くなった。大正から昭和にかけて、優艶で可憐な画風で若い人たちの大きな共感を呼んだ。』と書かれています。坂は今の東京大学北東に位置しており、坂上からはゆっくりと右にカーブしてまた左にカーブしている長い長いゆったりとした傾斜の坂道です。坂の途中右に東大の弥生門があり、その正面左には竹久夢二美術館があります。この美術館の建屋前にはちょっとした階段があり玄関まで行ってみましたが丁度休館日で見学はできませんでした。『江戸切絵図集成』を見ますと、今の東大の敷地は加賀藩の広大な敷地であり、根津神社のあるあたりまでは水戸殿、小笠原信濃守と大名屋敷が続いていてこの坂はありません（この間には道も書かれていません。）。この坂道は位置的には加賀藩と水戸藩の敷地の間を通っているような位置になっていますが、いつのころに造られて道なのでしょうか？いくつかの本を調べてみましたがどれにも書かれていませんでした。後々の課題です。文京区の資料によりますと、標にも書かれているように「暗闇坂」と称する坂道が都内で１２か所もあるとのことです。これまで私が歩いてきた中でも港区の麻布十番近くにも「暗闇坂」がありました。共通しているのはいずれの「暗闇坂」も細い道でその時代は薄暗い寂しい人通りも少ない夜になると狸か狐が化けて出そうな感じのする陰気な坂道ということです。
	弥生坂(別名：鉄砲坂）
	弥生坂上		弥生坂中		弥生坂下
	この坂の標には『かつて、このあたり一帯は「向ヶ岡弥生町」といわれていた。元和年間（１６１５〜２４）の頃から、御三家水戸藩の屋敷（現東大農学部、地震研究所）であった。隣接して、小笠原信濃守の屋敷があり、南隣は加賀藩前田家の屋敷（現東大）であった。明治２年（１８６９）これらの地は明治政府に公収されて大学用地になった。明治５年（１８７２）には、この周辺の町家が開かれ、向ヶ岡弥生町と名づけられた。その頃、新しい坂道がつけられ、町の名をとって弥生坂と呼ばれた。明治の新坂で、また坂下に幕府鉄砲組の射撃場があったので、鉄砲坂ともいわれた。弥生とは、水戸徳川斉昭候が、文政１１年（１８２８）３月（弥生）に、このあたりの景色を詠んだ歌碑を、屋敷内に建てたからという。　”名にしおふ向ふが岡なれば　世にたぐひなき花の影かな”　徳川斉昭』と書かれています。坂は言問い通りにあり広くきれいに整備されています。坂上は暗闇坂と交わり、緩やかに曲がりながら傾斜もゆるく根津駅へと下っています。また根津駅近くを底として向かい側には善光寺坂が上っています。坂途中には弥生式土器発掘の地碑があり、この坂名もそこからの由来ではと思っていましたが説明では弥生式土器発掘の文は見当たりません。いろいりな資料を調べてみましたところ、「今昔　東京の坂」に土器が発掘されたのは明治１７年（１８８４）になってのことで、”弥生式土器”の名は、先に”弥生町”という町名があって地名をとって付けたとかかれていました。なるほど町名のほうがはるかに古いのですね。なっとくです。
	異人坂
	異人坂上		異人坂下		この坂の標には『坂上の地に、明治時代東京大学のお雇い外国人教師の官舎があった。ここに住む外国人は、この坂を通り、不忍の池や上野公園を散策した。当時は、外国人が珍しかったことも手伝って、誰いうとなく、外国人が多く上り下りした坂なので異人坂と呼ぶようになった。外国人の中には、有名なベルツ（ドイツ人）がいた。明治９年（１８７６）ベルツは東京医学校の教師として来日し、日本の医学の発展に貢献した。ベルツは不忍池を愛し、日本の自然を愛した。異人坂を下りきった東側に、明治２５年（１８９２）高林レンズ工場が建てられた。今の２丁目１３番付近の地である。その経営者は朝倉松五郎で日本のレンズ工業の生みの親である。』と書かれています。この坂は「今昔　東京の坂」には載っていませんが、坂中には赤字でかいたような説明があります。崖線に沿って傾斜を斜めに横切っている切通し的な傾斜を伴った坂ですが極々短い坂です。坂上は高台ながら平地がありこのころから開かれていたのではと思います。
	お化け階段
	お化け階段上		お化け階段中		お化け階段下
	この階段阪の標は見つかりませんでした。「今昔　東京の坂」には載っていませんでしたが、「文京区観光ガイド」にありましたので行ってみましたが、”お化け階段”の由来が諸説あり、”上りの段数と下りの段数が違う。”や”その時代にお化けが出た。”説といろいろありどれが本当かわかりません。私なりに感じたことなのですが、なぜ”お化け階段”と呼ばれたのかというと写真でご覧のように左側を上がっていきますと途中で階段がなくなり幅が半分なくなってしまっています。これが由来ではなかろうかとかってに想像しています。階段坂は非常に急傾斜の場所にあり途中でくの字に曲がっています。上り下りには大変苦労するのではと思えるほどの急階段です。いつの頃からある階段坂なのかは不明です。区役所で確認をしてみたいと思っています。
	新坂（別名：権現坂、S坂）
	新坂上		新坂中		新坂下
	この坂の標には『本郷通りから、根津谷への便を考えてつくられた新しい坂のため、新坂と呼んだ。また、根津権現（根津神社の旧称）の表門に下る坂なので権現坂ともいわれる。森鴎外の小説「青年」（明治４３年作）に、「純一は権現前の坂のほうに向いて歩きだした。・・・右は高等学校（注・旧制第一高等学校）の外囲、左はできたばかりの会堂（注・教会堂は今もある）で、・・・坂の上に出た。地図では知れないが、割合幅の広いこの坂は、Sの字をぞんざいに書いたように屈曲してついている。・・・・」とある。旧制第一高等卯学校の生徒たちが、この小説「青年」を詠み、このんでこの坂をS坂と呼んだ。したがってS坂の名は近くの観潮楼に住んだ森鴎外の命名である。根津神社現社殿の造営は宝永３年である。五代将軍徳川綱吉が、綱豊（六代将軍家宣）を世継ぎとしたとき、その産土神（うぶすなかみ）として、団子坂北の元根津から、遷座したものである。』と書かれています。坂は記述にもあるように「根津権現」表門を坂下として、中央分離帯もない幅の狭い大きくS字にカーブしている割合に傾斜のある坂道で、権現神社前から上っていきますと息が切れてしまうほどのきつさがあり、住宅地を曲がりながら本郷通りへと上っています。が、いつの頃に造られた坂道なのかはわかりませんが一時期には本郷通りから根津の谷地へ下りる主要な道であったようですが、今は”根津裏門坂”の方が本郷通りから不忍通りを結ぶ主要な幹線通りとなっていて、平日の昼ごろなのか通る人もないような坂道です。
	根津裏門坂
	根津裏門坂上		根津裏門坂中		根津裏門坂下
	この坂の標には『根津神社の裏門前を、根津谷から本郷通りに上がる坂である。根津神社（根津権現）の現在の社殿は宝永３年（１７０６）五代将軍綱吉によって、世継ぎの綱豊（六代家宣）の産土神（うぶずなかみ）として創建された。形式は権現造、規模も大きく華麗で、国の重要文化財である。坂の上の日本医科大学の横を曲がった同大学同窓会館の地に、夏目漱石の住んだ家（”猫の家”）があった。「吾輩は猫である」を書き、一躍文壇に出た記念すべき所である。』と書かれています。説明は残念ながら坂のことより根津神社や夏目漱石のことのほうを主に書かれていて、坂の説明がありません。
	南は切通坂、西は本郷通り、北は根津権現で囲まれているこの辺を『江戸切絵図集成』で見てみますと、そのほとんどが”加賀藩前田家（現東大）、水戸藩（現東大農学部）、小笠原信濃守の敷地で占められ、その下（東側）の不忍通りとの間には武家地や神社地がありほとんどの道は、この広大な大名屋敷の敷地で本郷通りと不忍通りは遮断されてしまっています。わずかに切通坂の北側には、今の”根津裏門坂”が、”此辺アケホノノ里ト云”と書かれていて、その道も坂上と思われるところで左折となりまっすぐにはいけないようになっています。根津権現（南東側のみ）の周りにも門前町の町並みは描かれていますが神社北側には道はありません。根津裏門坂と団子坂の間（現日本医科大学）も小笠原左京太夫抱屋敷と大田摂津守の屋敷に挟まれたところに団子坂と根津裏門坂を結ぶ道が描かれています。これが”藪下通り”と思われます。道沿いの東側（傾斜地側）には団子坂付近と道下の根津裏門坂付近には町屋がありますが、傾斜の強い今の第八中学校や汐見小学校付近は”百姓地”と描かれています、やはり傾斜が強く人が住めるような場所ではなかったのではと思います。広大な大名屋敷で占められていた地域で、町人たちはもっぱら不忍通りの方に出かけて行ったので台地上の道もそれほど多くは必要なかったのではと思います。
	解剖坂
	解剖坂上		解剖坂下		この坂の標は見つかりませんでした。坂は東京医科大学裏にある階段坂で、坂上から見ると根津谷の谷地が一望できるかなりの傾斜のある階段がないと上り下りが大変そうな坂道です。いつの頃からの坂道なのかは説明がないのでわかりませんが、名前からいってかなり新しい坂道ではないかと思います。訪れた日は２月の大雪の後でまだ雪かきをしたのこりがあちこちにみられました。なぜこの階段坂を”解剖坂”と呼んだのか？「文京区観光マップ」にも載っていないのでこの辺にお住いの方々だけが呼んでいるのか？医科大学の裏の坂なのでそう呼んでいるのかは判りませんが、文京区役所にいって確認をしたいと思います。
	だんだん坂
	だんだん坂上		だんだん坂下		この坂の標は見つかりませんでした。坂は汐見坂下あたりにあり短いが傾斜のある階段坂です。「今昔　東京の坂」にも「文京区観光ガイドマップ」にも「文京区の坂」にも載っていなく、文京区の他の資料もいろいろと探してみましたがこの坂のことは見つかりませんでした。また、文京区々議会議員のホームペイジではこの坂を汐見坂としていますが汐見坂はこの坂ではなく藪下通りの坂のある一部が”汐見坂”と呼ばれている方が正しいと思います。なぜかは汐見坂の項をご覧頂けばわかると思います。この坂も新しい坂と思いますが、いつの頃にできたのかは不明です。のちのちの宿題です。
	汐見坂
	汐見坂上		汐見坂下と石碑（左上）		汐見坂下にある”汐見坂”の石碑
	この坂の標は見つかりませんでした。坂は団子坂上近くから入る”藪下通り”と呼ばれている細い道で、団子坂から入ってすぐに”森鴎外記念館”や森鴎外が住んだ”観潮楼”が右側にあります。左側は崖線で鋭く落ち込んでいます。（この”藪下通り”は別項で特集したいと思います。）坂はこの藪下通りの下あたりの坂のおある部分をそう呼んでいるようで、坂上から少し傾斜を持って下っています。坂下右側の石段の右上の写真のような大きな石碑がひっそりと置かれていました。（のでこの通りのこの部分が”汐見坂”であると断定しました。）藪下通り自身が団子坂から入ってなだらかに下っているので、どこからが汐見坂になるのかはわかりませんがきっとこのころには坂上から海が見えていたのではないでしょうか？坂上は根津谷を一望できる見晴らしの良い場所です。
	しろへび坂
	しろへび坂上		しろへび坂下		この坂の標は見つかりませんでした。「今昔　東京の坂」にも「文京区観光ガイドマップ」にも「文京区の坂」にも載っていません。坂は藪下通りを”森鴎外記念館”前左すぐにありますが坂の説明の標もなく近隣に住んでいらっしゃる方々がそう呼んでいる坂なのでしょうか？だんだん坂同様に追って調べていきたいと思います。坂はご覧のように非常に険しい傾斜のある階段坂で階段間際まで行かないとその傾斜を見て取ることがでないほどの急傾斜です。途中いったん傾斜がなくなり平道となりますが、その下に数段の階段があります。近隣にお住いの方々だけしか使っていない坂道のようですが、坂上から見る景色は民家や低層のビルが立ち並んではいますが根津谷の景観を読み取ることができ、崖線の鋭さも観ることができます。
	ちょっとブレイク
	藪下通り
	ここでちょっと気になっている”藪下通り”を取り上げてみたいと思います。藪下通りの一方は団子坂上付近から右に入る細い道にその名がつけられています。この道に入ってすぐに”森鴎外記念館”や森鴎外の住んでいた”観潮楼”が道の右側にあります。この辺から左側は深く落ち込んだ谷地となっており”第八中学校”や”汐見小学校”の広い敷地がその谷地底にあり、根津谷の景観を見ることができます。またこの道が崖線に沿って通っていることが判ります。森鴎外記念館前の道の反対側付近には”藪下通り”の説明板があります。その説明によりますと『本郷台地の上を通る中山道（国道１７号線）と下の根津谷の道（不忍通り）の中間、つまり「本郷台地の中腹に、根津神社裏門から駒込方面に通ずる古くから自然にできた脇道である。「藪下道」とも呼ばれて親しまれている。むかしは道幅もせまく、両側は笹薮で雪の日には、その重みでたれさがった笹に道をふさがれて歩けなかったという。この道は森鴎外の散歩道で、小説の中にも登場してくる。また、多くの文人がこの道を通って鴎外の観潮楼を訪れた。現在も、ごく自然に開かれた道のおもかげを残している。団子坂から上富士の区間は、今は「本郷保健所通り」の呼び方が通り名となっている。』と書かれています。いつの頃に根津裏門坂まで通ったのでしょうか？『江戸切絵図集成』には団子坂上付近から入る道が”小笠原左京太夫抱屋鋪”と”大田摂津守の屋敷とに挟まれた格好で根津裏門坂まで通っています。ここに描かれた道が今の”藪下通り”と思われます。道は説明にもありますように一方が団子坂上付近から始まり、”森鴎外記念館”や”観潮楼”を右に見て、すぐ左には”しろへび坂”があり、途中には”汐見坂”という名のついた少し傾斜のある坂道となり、根津裏門坂に通じています。汐見坂上付近には”だんだん坂”と名のついた階段坂があり、その先には現日本医大付属病院があり、その裏には”解剖坂”と呼ばれている長い階段坂がこの藪下通りにつながっています。解剖坂を過ぎたあたりから先は極なだらかに下って根津裏門坂にでます。脇道と解説されていますが本当に脇道という呼び方がぴったりするような道で、本郷台地と根津谷の中腹にあり崖線好きにはたまらない景観を持った道で森鴎外記念館前あたりから見る景観は民家や低層ビルで阻まれてはいますが根津谷地を一望できる場所でもありとても好きな場所のひとつです。ではこの藪下通りを”団子坂”方向から追ってみましょう。 下の陰影図のロールオーバー図と『江戸切絵図集成』の藪下通りと思われる部分の拡大図を方角を合わせて載せてみました。ご覧のように切絵図には団子坂上付近から横道（右の図の赤線部分）があります。これが今の”藪下通り”ではないかと思います。 では早速団子坂上から入って”藪下通り”を歩いてみましょう。
	藪下通りの現在			『江戸切絵図集成』にある藪下通り付近（行き泊りになっている）
	上の地形図と切絵図を比較してお判りの通り切絵図が書かれて頃のこの辺は大名屋敷が多くあり、藪下通りの両側にも右側（本郷台地上）には大田摂津守の屋敷が、左側には傾斜の鋭い当たりには百姓地がありその下に小笠原左京太夫のお抱え屋鋪が描かれていて脇道がないことがお分かりと思います。右側の地形図にある”しろへび坂”、”だんだん坂”、”解剖坂”はいつごろできた坂なのでしょうか？地理、地形に関しても歴史っておもしろいですね。
	団子坂側の藪下通り入口		藪下通り（右側に森鴎外記念館がある）		森鴎外記念館の入口
	左に小さな小さな児童遊園がある		児童遊園傍にあった観光案内図		藪下通りと下汐見小学校（崖の傾斜が判る）
	汐見坂の始まり付近		汐見坂下
	ちょっと気になった極狭な階段坂
				左の地形図を見ながらその場所を説明しますと、藪下通り下付近にあるだんだん坂を上がって進み右折少し手前に民家と民家の人ひとりが通れるくらいの狭い狭いブロック塀の隙間（隙間という表現がぴったしだと思うような狭い道です。）にあった階段坂がとても気になり探索してみました。住所的には千駄木一丁目８番となっていました。その脇道にはこの辺が昔千駄木駒込町と呼ばれていて、日本武尊が林に駒を集め、木々につなガれたのをみて「駒こみたり」といったので”駒込”と呼ばれたという小さな小さな金属の説明板が民家のブロック塀に打ち付けられていました。その先を行きますと急激にすごい角度を持って落ち込んでいる階段がありました。階段下まで下っていきますと右側に原生林そのままという感じの場所に出ました。そこには”千駄木ふれあいの杜”とあり説明の標もありました。この階段坂には名前はありませんでしたがとても気になったのでこの辺を紹介してみます。行き方としては地下鉄千駄木駅から団子坂を上がり藪下通りを入ってしばらく行った汐見坂上のだんだん坂の階段を上がって右折手前に細い細い脇道があります。住所的には先ほど書きました通り”千駄木一丁目８”にあたり、その住所標記のあるブロック塀とお隣のブロック塀との間に狭い狭い階段坂に行く道があります。その坂下に”千駄木ふれいの杜”があります。『江戸切絵図集成』をみますとこの辺は団子坂のある通りに沿って大きな寺院が３つあり、その左側（この階段坂のあるあたり。）は”大田摂津守”の敷地となっていて道などまったくありません。いつの頃に坂道なのでしょうか？ご興味の方は行かれてみてはと思います。うっそうとした樹木と下草に覆われた一角が見て取れます。いつの時代化はわかりませんが昔のこの辺はこんな感じの樹木と下草に覆われた場所であったのではと思いをはせらされる場所でした。そのすぐそばにはもう民家が密集しており”なぜこの場所がのこったのか？”と不思議に思いましたが、推察するにこの急傾斜の場所は開発の手も入らずに済んだ！からではないかと思います。ずっとずっと残っていてほしと思います。
	胸い階段坂の入口		ブロック塀にあった地域の説明		無名階段坂上
	階段坂下（左が”千駄木ふれあいの杜”）		”千駄木ふれあいの杜”
	団子坂（別名：潮見坂、汐見坂、千駄木坂、七面坂）
	団子坂上		団子坂中		団子坂下
	この坂の標には『潮見坂、千駄木坂、七面坂の別名がある。「千駄木坂は千駄木御林跡の側、千駄木町にあり、里俗団子坂と唱ふ云々」（御府内備考）、「団子坂」の由来は、坂近く団子屋があったともいい、悪路のため転ぶと団子のようになるからともいわれている。また、「御府内備考」に七面堂が坂下にあるとの記事があり、ここから「七面坂」の名が生まれた。「潮見坂」は坂上から東京湾の入江が望見できたためと伝えられている。幕末から明治末期にかけて菊人形の小屋が並び、明治４０年頃が最盛期であった。また、この坂の上には森鴎外、夏目漱石、高村光太郎が居住したいた。』と書かれています。坂はご覧のとおり坂上からはゆっくりと右に曲がりながら緩やかに下っています。坂下は不忍通りに面し、坂上をどんどん行きますと本郷通りに出ることができ昔ながらの主要な坂道であったと思われます。「今昔　東京の坂」には、この坂の説明が４ペイジわたって書かれていてシーズンになると菊人形を見せる小屋が多く出て非常に賑やかであったとされています。また夏目漱石が書いた「三四郎」にもこの辺の様子が詳しく書かれています。昔、幼いころどこかは忘れましたが、菊の季節に葭簀掛け小屋が立ち並んでいて菊人形がたくさん並んでいたのを見たことを思い出します。現在は両側に低層マンションや低層のオフィスビルが立ち並びそれらの一階には飲食店も多くみられ、今ではまったく想像ができません。
	アトリエ坂
	アトリエ坂上		アトリエ坂下		須藤公園
	この坂の標は見つかりませんでした。「今昔　東京の坂」にも、「文京区観光ガイドマップ」にも、「文京区坂道マップ」にも載っていない坂道です。この近辺を探索に行ったとき近所にお住いの方なのか？うろうろしていた時に声をかけてきて、私な何をしているかを説明しますとこの坂を案内してくれました。教えられたとおりに行ってみますと坂下右に”すどうこうえん”と書かれた標識がある小さながらもきれいに整備された公園があり、そのすぐ横をはじめなだらかに上り途中から急激な傾斜を伴った無名坂がありました。ご近所の方々だけがそう呼んでいるのでしょうか？この坂道を”アトリエ坂”と呼んでいるようです。これも文京区役所で確かめねばと思いますが、教えられたままに載せてみました。
	新坂（別名：福山坂）
	福山坂上		福山坂中		福山坂下
	此の坂の標には『「新選東京名所図会」に「町内（旧馬込西片町）より西の方、小石川掃除町に下る坂あり、新坂といふ」とある。この坂上の台地にあった旧福山藩主の阿部屋敷へ通じる、新しき開かれた坂ということで、この名がつけられた。また、福山藩にちなんで、福山坂ともいわれた。新坂と呼ばれる坂は、区内に六つある。坂の上一帯は学者町といわれ、夏目漱石をはじめ多くの文人が住んだ。西側の崖下一帯が、旧丸山福山町で、樋口一葉の終焉の地でもある。』と書かれています。坂は坂上からゆっくりとS字に曲がって少しの傾斜を持って白山通りへ下っています。この辺は『江戸切絵図集成』が書かれたころには今の白山通りが水道橋より水戸家の屋敷横までしかなく、その上は武家屋敷が密集して建っており”福山藩”ももなく小さな道しかありません。いつごろできた坂道なのでしょうか？おっての課題です。
	曙坂（別名：徳永坂）
	曙坂上		曙坂下		誠之小学校（左）と崖線
	この坂の標には『「江戸砂子」によれば、今の白山、東洋大学の北西は、里俗に鶏声ヶ窪といわれるところであった。明治２年（１８６９）に町ができて、鶏声暁にときを告げるところから、あけぼの（暁と同じ）を取り町名とした。この坂の場所と、曙町、鶏声ヶ窪とは少し離れているが、新鮮で、縁起の良い名称を坂名としたのであろう。この坂は西片と白山を結び、人々の通学や生活に利用されてきた。昭和２２年（１９４７）には旧丸山福山町・曙会の尽力により石段坂に改修された。』と書かれています。坂は白山通りからひとつ奥に入った区立誠之小学校の崖下に沿ってカーブしている道から崖線の中ほどに上がるコンクリートの階段坂があります。短いまっすぐな傾斜のきつい手すりもつけられた階段坂です。『切絵図』で見ますと、本郷通りの追分から入った駒込片丁と白山通りから一本入った通りがあり、武家屋敷の軒を連ねた道がありこの間にいくつかの道筋があります。しかし絵図には坂道の名も印（"|||”）もありません。
	胸突坂（別名：新道坂、峯月坂）
	胸突坂上		胸突坂下		この坂の標には『「丸山新町と駒込西片町との境にある坂を胸突坂といふ、坂道急峻なり、因って此名を得、左右石垣にて、苔滑らか」と「新選東京名所図会」にある。台地の中腹から、本郷台地に上がる坂、坂上から白山通りをへだてて、白山台を望む。「胸突坂」とは急な坂道の呼び名で区内に三ヶ所ある。この坂のすぐ南の旧西片町一帯は、福山藩の中屋敷跡で「誠之館」と名づけた江戸の藩校のあったところである。』と書かれています。坂は曙坂と並行して同じく区立誠之小学校の崖下から同じ第一幼稚園のある道筋に上がっています。車も通れないような細い道筋にある急峻な坂で坂道の両側は住宅が密集しています。
	中坂
	中坂上		中坂下		この坂の標は見つかりませんでした。坂は浄心寺坂と胸突坂との間にあります。ので”中坂”と名前がついたのでしょうか？傾斜のあるまっすぐな坂道でっす。ご覧のとおり坂下から見て右側は開発もなく放置されたままの敷地があり、この辺に標識があったのではと思われますが、標識は見当たりませんでした。が、ご近所の方何人かにお聞きしましたところ、坂上には小さな遊園地もあり「文京区観光ガイドマップ」に合致しており、「今昔　東京の坂」にも、”静かな急坂、すべり止めに横線の刻みが道に付けてある。”とあり、この坂道が”中坂”でると思われます。『切絵図』にも追分から一本入った崖線の中腹の道と白山通りの裏道との間にかけて何本かの道が書かれていますが、坂名も坂の印"|||”もありません。
	浄心寺坂 （別名：於七坂、お七坂）
	浄心寺坂上		浄心寺坂下		八百屋於七の墓のある円乗寺
	この坂の標には『「小石川指ヶ谷町より白山通りを経て東の方、本郷駒込東片町へ登る坂あり。浄心寺坂とうふ。」（新選東京名所図会）浄心寺近くの坂なので、この名がついた。また、坂下に「八百屋於七」の墓所円乗寺があることから「於七坂」の別名もある。』と書かれています。地形図を見ていただくとお判りのとおり坂は白山通りのある低地に向かって下っており坂下で旧白山通りにある白山坂下と合流しています。この辺は説明にもありましたように”小石川指ヶ谷”と呼ばれている低地の谷地部分に当たりここから旧白山通りが北に、浄心寺坂のある道が東に向かって上っています。この坂のある道筋には坂中に浄心寺があり坂名にもなったいて、隣には八百屋於七の墓所である円乗寺があります。坂は坂上で少し傾斜のある細長い坂道です。旧白山通りとこの坂道との間にはあと道京寺というお寺がありこの三角地帯を占めています。
	薬師坂（別名：薬師寺坂、浄雲寺、白山坂、地蔵坂）
	薬師坂上		薬師坂下		この坂の標には『「妙清寺薬師堂有之候に付、里俗に薬師坂、と相唱申候」（「御府内備考」）坂上の妙清寺に薬師堂があったので、薬師坂と名づけられた。また、坂下に浄雲院心光寺があったので、浄雲寺坂とも呼ばれた。また近くに白山神社があり、旧町名が白山前町で、白山坂ともいわれるなど、別名の多い坂の一つである。「新選東京名所図会」には「薬師堂は、土蔵造一間半四面。「め」の字の奉額、眼病全快者連名の横額あり。」と明治末期の姿を記している。このお薬師は特に眼病に霊験あらたかであったよおうである。土蔵造は、江戸の防火建築で、湯本本郷辺の町屋が土蔵塗屋づくりを命じられたのは、享保１５年（１７３０）の大火後である。現存するものに無縁坂の講安寺本堂がある。』と書かれています。坂は旧白山通りにあり小石川指ヶ谷の谷地から本郷追分通りの５差路に上がっている現在は幹線通りのようになっています。坂上の５差路は『切絵図』にもあり、この辺の道は昔からそのままであったと思われます。また、坂の左右には白山権現はじめお寺が多く存在しています。
	伊賀坂
	伊賀坂上		伊賀坂下		この坂の標には『白山台地から白山通りに下る坂で、道幅は狭く、昔のままを思わせる。この坂は武家屋敷にちなむ坂名の一つである。伊賀者の同心衆の組屋敷があった（「御府内備考）」とか、真田伊賀守屋敷があった（「改選江戸誌」）という二つの説がある。「江戸名所図会」では真田伊賀守説をとっている。伊賀者は、甲賀者と共に、大名統制のための忍者としてよく知られている。』と書かれています。坂は坂上が急な下り坂で途中から左にカーブしながらゆっくりと下っています。『切絵図』には武家屋敷がびっしりと立ち並んでいでいます。近くには”小石川馬場”と書かれた馬場があります。近江屋版にはこの坂と思われる”△”の印のある道がありますが、今は住宅がびっしりと立ち並んでいて当時の面影は全く感じられない場所でもあります。また、この坂道に沿って松平備中守の広大な下屋敷敷地があります。
	蓮華寺坂（別名：蓮華坂、御殿裏門坂）
	蓮華寺坂上		蓮華寺坂下		この坂の標には『「蓮華寺即ち蓮花寺といへる法華宗の傍らなる坂なればかくいへり。白山御殿跡より指ヶ谷町の方へ出る坂なり。」と改選江戸誌にある。蓮華寺は、天正１５年（１５８７）高橋図書を開基、安立院日雄を開山として創開した寺院で明治維新までは、塔頭が六院あったという。なお、この坂道は小石川植物園脇の御殿坂に通じ、昭和５８年（１９８３）にハナミズキやツツジが植栽され、春の開花、秋の紅葉が美しい並木道である。』と書かれています。坂はゆっくりと左にカーブしてやや傾斜を持って下っています。今は坂上の白山通りで浄心寺坂とは切り離されていますが、『切絵図』では白山御殿大通りとして浄心寺坂、蓮華坂、御殿坂と続いています。坂上から向かって左側には”蓮華寺”と大きな敷地を持ったお寺が書かれていますが、今は全くの住宅地となっています。
	御殿坂（別名：御殿表門坂、大坂、富士見坂）
	御殿坂上		御殿坂中		御殿坂下
	この坂の標には『「御殿坂は戸崎町より白山の方へのぼる坂なり、この上に白山御殿ありし故に、この名遺（のこ）れり、むかしは大坂といひしや。」（「改選江戸誌」）　「享保の頃、此坂の向ふに富士峯よく見へし故に、富士見坂ともいへり」（「江戸誌」）白山御殿は、五代将軍徳川綱吉が将軍就任以前、館林候時代の屋敷で、もと白山神社の跡であったので、白山御殿といわれ、またその地名をとり小石川御殿ともいわれた。綱吉の将軍就任後、御殿跡は幕府の薬園となった。享保七年（１７２２）園内に”赤ひげ”で有名な小石川養生所が設けられた。また同２０年には、青木昆陽が甘藷（かんしょ）の試作をした。明治になってからは東京大学の付属植物園となった。』と書かれています。坂は蓮華坂を上りきったところが御殿坂上でもあり、小石川植物園の南東を植物園の入口に向かって左にゆっくりと大きく曲がりながらかなりの傾斜を持って下っている長い長い非常にきれいに整備されている坂です。『江戸切絵図集成』にも「コテンサカ」（小石川繪圖）とも「コノスヘコテンサカ」（駒込繪圖）とも書かれた坂が”小石川御薬園”の東を下っているのが見えます。蓮花寺坂上と御殿坂上は”廣小路”と書かれてかなり道幅が広く書かれています。ですが今は車一台が通れる程度の道幅しかなく、しかし歩道が整備されています。御殿坂下、御薬園前には細く曲がりくねった道（小石川戸サキ丁と書かれています。）もその当時のままのようで、道沿い御薬園の反対側細長い一帯は”田、田、田”と書かれていて田んぼであったことが見えます。また、その田んぼの南側（今の氷川坂下通りのあたり）には川が描かれています。（神田川の支流があったようですが今はまったく面影もありません。）また、川の反対側は大きな寺院で埋め尽くされています。その中でも今も誇る”無量山壽経寺伝通院”が筆頭に大きな寺院として書かれています。なぜと思って地形図（陰影図参照）を見てみますとこの辺は春日通りの台地上、小石川植物園のある半島状の台地（白山二丁目先で落ち込んでいます。）、旧目白通りのある台地上の間に千川通りの通っている低地と白山通りの通っている低地がありそれらの低地が白山二丁目と小石川一丁目あたりで交わってもいるところです。ですのでこの低地と台地の間に坂道が多くあるのだと思います。
	逸見坂（へんみさかと読みます。）
	逸見坂上		逸見坂下		この坂の標は見つかりませんでした。坂は白山通りからまっすぐに上っている傾斜もある道幅の狭い短い直線の坂です。『江戸切絵図集成』にも描かれている昔からの道ですが、今は路地的な生活道路となっているようです。
	暗闇坂
	暗闇坂上		暗闇坂中		暗闇坂下
	この坂道の標は見つかりませんでした。坂は白山通りと旧白山通りの間の台地にあり台地上から白山通り側にある京華女子中・高校に向かって下っている傾斜のある、途中で左に曲がっている。この近辺にお住まいの方しか通らないような細い細い坂道です。『江戸切絵図集成』にも丁度描かれている地域の境目でもありこの辺は詳しく描かれていません。
	一行院坂
	一行院坂上		一行院坂下		この坂の標は見つかりませんでした。坂上に”一行院”というお寺がありましたのでそれにちなんだ坂名と思いますが坂上はなだらかで少し行ってから急激に落ち込んでいる傾斜のきつい坂道です。「文京区観光ガイドマップ」には載っていませんでしたが「今昔　東京の坂」、「文京区の坂道」には載っていましたので行ってみました。坂は一本道で一行院の正面をっ通って白山通りに下りていきます。しかしながら「江戸切絵図集成」には一行院というお寺は描かれていますが、この坂道はありません。旧白山通りとの間は大名屋敷が立ち並んでいて道もありません。「今昔　東京の坂」にも２行くらいの説明しかなくこの坂がいつ頃ににできたのかは判りません。
	この辺を『江戸切絵図集成』でみますと、本郷通りと小石川植物園の間の土地はそのほとんどが広大な大名屋敷地であったり、数多くの武家屋敷がある武家屋敷町であったことが覗えます。本郷通りと旧白山通りの交わるあたりからは土井大炊頭の広大な敷地があり、北西部は武家屋敷が密集しています。また旧白山通り南にも多くの大名屋敷が描かれており、その南側（台地上）にも無数の武家屋敷が描かれています。旧白山通りと小石川植物園の間の道は、その当時からの道がそのまま残っています。今の白山通りはなく、今も残る龍雲院前と逸見坂下の通りは細い曲がりくねった道が描かれていて、旧白山通りと思われる道には、”トカラハシ”や”此辺ケイセイカク”、”上追分”の文字が見られます。蓮花寺坂上、逸見坂上を結んでいる横の道には”小石川白山御殿跡大通り”と書かれている道があり、当時はこの道が主であったと思われいます。地形図（陰影）をみますと面白いことに大名屋敷低地にあり、武家屋敷地の多くは台地上にあるということです。地形的にもこの辺は小石川植物園のある半島状の台地と、その右(南）の台地と、白山神社北の台地とがあり地形が大きく入り組んで入り所でもあります。この辺も”崖線歩き”でゆっくりと歩き回ってみようと考えています。
	先日（０３／１８／２０１４）に文京区役所の情報センターに行き、アトリエ坂、解剖坂、しろへび坂、だんだん坂など区の公式資料に載っていない坂道について聞いてきました。区役所の方のお話では「これらの坂道は坂道の周りに住んでおられる方々が通称として呼んでいる坂道名であって区としての正式な坂道名は”文京の坂道”や”文京区観光ガイドマップ”、”文京区の坂道（Ａ３一枚）”に載っている範囲です。」とのことでした。ですが東京オリンピック開催のお為の乱開発してできた坂道ではなく、それらの坂道にも由緒・謂れがあり、歴史があることなのでここに載せてみました。